五里夢中

「戦雲の夢」という本を読みました。四国統一を成し遂げた名将長曾我部元親の子、悲運の将長曾我部盛親の人生を描いた作品で、著者は司馬遼太郎さんです。一つ前の文は意図的に漢字一杯にしてみました。この作品の核心となるのは、人には然るべき生き方があり、また然るべき死に方があるのだということだと思いました。関ヶ原の役では西軍に加わり敗れた盛親が大坂冬の陣、夏の陣で自らの全てを賭けて戦さに挑む様は本当に雄々しく美しいものがあります。自分の力を試す機会すら持てなかった彼がついにその場を得て一瞬の輝きを放つわけですが、それまでに永遠につづくかのような雌伏の時期の描写があったのを受けて、その輝きが鮮烈なカタルシスをもたらします。波風立てずがモットーのおれですが、一生に一度は乾坤一擲の大勝負をしたいものじゃという気にさせられてしまいました。恐るべきは司馬の魔力。